エジプトの砂漠をオアシスに変えた、縄文に通じるコミュニティ「SEKEM」

Lifestyle

先日、私が経営する中東雑貨店での仕入れを検討するために、エジプト産のオーガニック・ハーブティー「SEKEM」を取り寄せてみました。

試飲してみたところ、ものすごく美味しい上に体の内側から整う感覚がして驚いたのです。

植物のパワーが凝縮された味と香りの奥には、不毛の砂漠を緑のオアシスへと変えた「奇跡」の物語が隠されていました。

エジプトの地で45年以上続く「SEKEM(セケム)」の試みは、農業を単なる生産手段とするのではなく、地球と人間、そして宇宙を繋いだ縄文的な営みに通じるものがありました。

今回の記事は、地球の未来に希望を灯す奇跡のコミュニティ「SEKEM」をご紹介します。

砂漠に奇跡を起こした「SEKEM」の誕生

「生命力」という名の出発

「SEKEM」とは、古代エジプトの言葉で「生命力」あるいは「凝縮されたエネルギー」を意味します。 

1977年、ドイツやオーストリアで薬学を学んだエジプト人のイブラヒム・アブレイシュ博士は、広大な砂漠の中にこの「生命の種」を蒔くことを決意しました。

当時、そこにあったのは動植物の気配さえない、乾いた砂の海でした。

ルドルフ・シュタイナーとの邂逅

博士のビジョンの核となったのは、オーストリアの哲学者ルドルフ・シュタイナーが提唱した「人智学(アンソロポロジー)」です。

博士は、現代社会が失いつつある「人間と自然の霊的な繋がり」を取り戻すことでしか、祖国エジプトの再生はあり得ないと考えたのです。

1977年、創業当時のSEKEM。エジプトの首都カイロから北東60kmに創られたコミュニティ型オアシス。

天体と土壌を結ぶ:バイオダイナミック農法の神秘

SEKEMの農業は、単なる「無農薬」に留まりません。

彼らが実践するバイオダイナミック農法は、農場全体を一つの「生きている有機体」として捉える、極めて精神性の高い農法です。

宇宙のリズムとの調和

種まきや収穫のタイミングは、月や惑星の運行に基づいたカレンダーに従って決定されます。

天体の微細な振動が土壌や植物の成長に影響を与えるという考えに基づき、大いなる宇宙のサイクルと呼吸を合わせるのです。

霊的な調合剤(プレパラート)

牛の角に詰めた牛糞や水晶、カモミールやタンポポなどの薬草を用いた特殊な調合剤が、大地を癒やす「ホメオパシー」のように機能します。

これらは、目に見えない「エーテル的な力」を土壌に呼び込み、砂漠の砂を生命力溢れる「生きた土」へと変容させていきました。

その結果、エジプト全体の綿花栽培における農薬使用量を90%削減させるという、科学的にも驚異的な成果を叩き出したのです。

エジプトを動かした「農薬90%削減」の真実

1980年代、エジプト政府は国策として綿花畑への農薬の一斉空散を行っていましたが、これがSEKEMの清浄な大地をも汚染していました。

創設者アブレイシュ博士は政府に対し、バイオダイナミック農法による綿花栽培が化学農法と同等の収益性を持つことを科学的に証明。

この実証データが国家を動かし、1993年に「綿花への農薬空散を禁止する法律」が制定されました。

  • 驚異の数値: 年間約35,000トンだった農薬使用量は、わずか数年で約3,000トンへと激減(90%削減)。
  • 手法の転換: 虫を毒で排除するのではなく、フェロモントラップや天体のリズムを活用し、植物自体の免疫力を高める「共生」の道を選択。
  • 精神的意義: 博士はこの成果を、単なる環境保護ではなく「エジプトという国の魂が化学物質への依存から解放され、宇宙の調和を取り戻したプロセス」であると位置づけています

「愛の経済」が創り出す循環

SEKEMの活動は農業の枠を超え、教育、医療、芸術、そして経済へと広がっています。

彼らが掲げる「Economy of Love(愛の経済)」という独自の認証制度は、単なるフェアトレードを超えた概念です。

製品の価格には、自然への敬意と、生産者の尊厳を守るためのコストが正当に含まれています。

消費者がSEKEMのハーブティーを選ぶとき、それは単なる購買行動ではなく、砂漠に木を植え、現地の子供たちに教育を届け、地球の癒やしに参加するという「意志の表明」となるのです。

砂漠で見つける、自分の内にある「SEKEM」

SEKEMの農場では毎朝、従業員たちが円陣を組み、感謝の言葉を唱えることから一日がはじまります。

そこには、労働を苦役とするのではなく、自己の精神を高め、社会に貢献する「祝祭」とする文化が根付いています。

博士はかつてこう語りました。

「砂漠を緑に変えることは、私たちの心のなかにある砂漠を緑に変えることでもある」

私たちが一杯のハーブティーを口にするとき、砂漠の強い太陽を浴びて育ったハーブの力強い香りが、私たちの内側にある「SEKEM(生命力)」をも呼び覚ましてくれるかもしれません。

縄文の叡智と共鳴する、一万年の循環

砂漠を緑に変えたSEKEMの精神は、かつて日本列島で一万年以上続いた「縄文」の自然観と深く共鳴します。

自然から奪うのではなく、恵みを分かち合い、循環のなかで生きる。

バイオダイナミック農法が目指す「大地を一つの生命体と捉える視点」は、万物に命を見出す縄文的なアニミズムにも通じています。

場所や時代は違えど、大地を敬い、共に生きる祈りはひとつ。

一杯のハーブティーが運ぶ香りは、遠い砂漠の再生の物語と、私たちの基底にある生命の記憶をあざやかに繋いでくれるのです。

MAYO
MAYO

ハーブティーはアニス・カモミール・ハイビスカス・ペパーミントの4種類。

アニスは消化促進や更年期に、カモミールは安眠効果やリラックスしたいとき、ハイビスカスは疲労回復と美肌効果、ペパーミントは頭痛胃痛の緩和や集中したいとき。

ちょっとした体調不良はハーブティーで回復しちゃうよ♪

text: OMOMUKI magazine / CHAKA MAYO

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