アイヌ世界の黄泉比良坂? あの世とこの世の境界〝アフンルパロ〟

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ー あるニシパ(首領)が浜へ昆布拾いにいくと、見覚えのある女性が昆布を拾っていた。近づくと亡くなったはずの妻だった。声をかけようとしたら妻は岩穴へ入っていった。後を追うと岩穴はすぐ行き止まりニシパは入ることができなかった。人間は入れないが亡くなった人は出入りできる。それでここがあの世の入り口“アフンルパロ”だとわかった ー
(出典:北海道白老町 アヨロの大地 より)

この伝承を知った時、「アイヌ民族版の黄泉平坂(よもつひらさか)ではないか?」と思った。黄泉比良坂は「あの世(黄泉の国)とこの世の境目」として日本神話に登場する場所で、島根県に実在するとされる。(黄泉比良坂については改めて別記事で紹介します!)

“アフンルパロ(ahun-ru-paro)”はアイヌ語で「あの世へ行く道の入口」を意味する。海岸や河岸の洞窟をさし、アイヌの人々の間では「地獄穴」と呼ばれ近づくことを禁忌とされた場所だった。

アイヌの世界では、人は死を迎えると肉体から抜け出した霊が洞窟を通ってあの世に行くと考えられていた。この洞窟(アフンルパロ)を通り、亡くなった人がこの世に現れることもあるという。

アフンルパロは北海道の各地に存在する。アイヌ言語学者 知里真志保さんは、海辺や水辺にくらすアイヌの人々にとって、洞窟は祭儀を行う神聖な場所だったのではないかと推察している。(出典: あの世の入口――いわゆる地獄穴について――知里真志保 )

私がアフンルパロを訪れたのはひょんなことでした。友人が海に行くというので「カシパンが拾えたらいいな」とついて行ったのです。それまでアフンルパロのことは知りませんでした。

訪れたのは白老のアフンルパロ。7万年〜4万年前の倶多楽火山の噴出物層が洞窟になったものでした。地元の有志が埋まっていた砂を掘り出し史跡にしましたが、現在は危険区域として立ち入り禁止になっています。
(室蘭・登別の公式HPほか様々なBlog・YouTubeで紹介されています。気になった人は「アフンルパロ アイヌ 洞窟」といったキーワード入力で検索を!)

アフンルパロを眺めていたら、松島(宮城)の洞窟で見た仏像彫刻が連想されました。これが本州だったら、修行僧がここで修行して洞窟に仏を彫り、後世の人々が聖地として祀ったかもしれません。

アイヌの人々はこうした場所に手を加えることをしませんでした。人工的な意味づけをせず、自然のまま「生と死」「この世とあの世」の境界として尊重する死生観を好ましく感じました。

ふと、「幼い頃に遊んだ場所にもアフンルパロはあったのかもしれない」と思いました。
もしかしたら誰もが知らずに、この世とあの世の境界に立っているのではないか?インスピレーションや発想の源泉は案外、そういう瞬間から湧いてくるのかもしれません。 

アフンルパロの近く、ニシパが昆布を拾ったかもしれない浜辺で私が拾ったカシパンは、白く化石化し、5枚の花弁のような模様が入ったハスノハカシパンでした。うす焼きせんべいのような形状のハスノハカシパンは全部で12個ありました。友人が「なんだか海に歓迎された気がする」と言い、私もそんな気がしました。

アフンルパロのあとだと、思わず「アノヨ」と見間違えてしまう ♨︎アヨロ温泉♨︎

text: OMOMUKI magazine/ CIMACUMA SAORI

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