ミシェル・ンデゲオチェロとは何者か。彼女の音楽は何かのスタイルに括られるものではなく,彼女の強烈な個が表現の核にある。R&B/HIPHOPアーティストとして取り扱われることは多いが,それにも強烈に違和感がある。さりとて今のジャズの流れの中だけにあるのかといえば,それも物足りない。一つの箱に収まりきらないことこそが彼女の正体であり魅力である。
最初,クラシックのチェロ奏者を目指した
彼女は,今や魂の自由と解放を歌うメッセンジャーであり,カリスマであり,数多くのミュージシャンのメンターでもある。ベーシストあるいはヴォーカリストとしても活躍し,ミシェル・ジョンソンというクレジットでスティーブ・コールマンなどの作品に登場していたこともある。ソロ・アーティストとしてキャリアをスタートする前には黒人ハードロック・バンドのリビングカラーのベーシスト候補として話題になった。また,マドンナなど,ポップ・シーンでの彼女の支持者は少なくない。
過去作品を並べて聴くと,R&Bからファンク,フォーク,ジャズ,ポスト・ロックなど捉え所がない。しかし”ミシェル・ンデゲオチェロという個性”という刻印はどの作品にも色濃く残る。一度,自らの音楽的趣向を手放して彼女の作品に触れれば誰もがその世界観に圧倒され,その魅力に引きずり込まれる。
音楽評論家やミュージシャンからの高い支持にも関わらず,一般への浸透度が常に高まらず,どこかマニアックな存在であり続ける理由にはこうした”音楽でなければ表現できないもの”に依拠しているからだろう。
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