セレンデピティ 松に呼ばれているのかもしれない

Gourmet

「松」とのご縁が、最近ますます不思議なことになっている。

最初のきっかけは、シベリアの松ぼっくりジャムだった。

ロシアのシベリア地方では、若い松ぼっくり(青松)を砂糖で煮てジャムにする文化がある。
伝統的な加工食品であるそのジャムを紹介しているうちに、
しまくま堂では「松ぼっくりのお茶」や「松ぼっくりソーダ」というドリンクメニューが生まれ、
松ぼっくりジャムの松で、マジカルでふしぎなお菓子を作る TARAちゃんに
「松ぼっくりチョコレート」を作ってもらった。

栄養価の高い松ぼっくり(*青松なので柔らかい)を、
たくさんの人が驚きに溢れて食べて、感動する様子が嬉しい。

そんなある日、ふと気づいたことがあった。

以前読んだウラジーミル・メグレの著書『アナスタシア(響きわたるシベリア杉シリーズ)』に
登場する「シベリア杉」。ずっと、杉の仲間だと思っていた。

ところが調べてみると、この「シベリア杉」は植物学的には杉ではなく、
マツ科マツ属のシベリアマツ(シベリアゴヨウ)だった。

ロシア語ではこの木を「ケードル(杉)」と呼ぶため、
そのまま「シベリア杉」と訳されたらしい。
つまり、アナスタシアの物語の中心にあるあの木も、実は松だった。


月に一度、出店しているお寺の朝市に
お松を愛する会」のご友人が、松ぼっくりジャムと、チョコレートを買いに来てくれた。
後からよく見たら、お松を愛する会で発行している書籍のイラストレーターさんだった。

松が、松を呼ぶ。
なんだかおもしろいこの現象に、さらに追い打ちをかけたのが
ギーゼラ・プロイショフの著書『木の癒し』という本だった。

ケルト民族には「木の暦」があり、その考え方がヨーロッパに伝わっている。
32の樹木それぞれに特徴と効用があり、誕生日に対応しているという。 

誕生日ごとに対応する樹木。何気なく、自分の誕生日を調べてみた。

すると、そこに書かれていたのは――

松。

思わず「また松なの!?」と笑ってしまった。


もちろん、木と人との相性に科学的な根拠があるわけではない。

それでも、不思議と同じ木が何度も目の前に現れると
「何かご縁があるのかもしれない」と思いたくなるのが人情かもしれません。

松は一年中緑を保つ常緑樹で、古くから長寿や生命力の象徴とされてきた。

厳しい冬を越え、風雪に耐えながら生きる姿は
北海道やシベリアの自然ともどこか重なる。

<おまけ>
しまくま堂の名物(?!)となりつつある、松ぼっくりソーダの簡単レシピ

 松ぼっくりシロップ 大さじ1〜2
 炭酸水 150〜200ml
 お好みでレモン少々

氷を入れた(※氷はお好みで)グラスに、シロップを注ぎ、炭酸水をゆっくり注ぐだけ。

かき混ぜると、ぷくぷく.. 発酵した松からも、泡が出る。
森の香りを閉じ込めたような、少し不思議なソーダができあがる。


ひとつの興味を持つと、こうして世界がつながり始めること。

こうした偶然のつながりは、「セレンディピティ」と呼ばれることがある。

けれど最近の私は、それは単なる偶然だけではないのかもしれない、と感じている。

以前は頭の中で考えすぎて、左脳のおしゃべりに振り回される時間が多かった。
感情も思考も絡まり合って、目の前にあるものをゆっくり味わう余白が少なかったように思う。

けれど、「自分軸」を育てることを意識するようになってから、少しずつ変化が訪れ始めた。

頭の中のノイズが静かになると、体の感覚や五感に意識が向くようになる。
世界の広がり方が豊かになったと感じる。
五感を満たすというこの世的な喜びが深まり、小さな喜びを味わえるようになると、
それまで点在していたひとつひとつの事象が、線でつながり始めた。

見える世界と、見えない世界。

その間に、はっきりと境界線があるのではなく
私たちは日々、そのあいだに橋をかけて自然に行き来しているのかもしれない。

自分という一本の樹木(軸)が、世界へ枝を伸ばしていく。
松の枝が四方へ広がるように、ひとつの事象はまた次の事象へとつながっていく。

シベリアの松ぼっくりジャムから始まった、松とのご縁。
次はどんな展開が広がるんだろう?

私が松を探しているのか、松が私を呼んでいるのか。
卵が先か鶏が先かみたいに、だんだんわからなくなってきた。(笑)

シベリアの保存食:松ぼっくりジャムと松の葉サイダーの作り方
ロシア・シベリア地方には、自然の恵みを活かした保存食の文化があります。その中でもユニークなのが、若い松ぼっくりで作る「松ぼっくりジャム」です。昨年の秋、シベリア産の松ぼっくりジャムを初めてダーチャで紹介しました。「食べてみたかった!」という...

text / omomuki magazine/ CIMACUMA SAORI

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