チェコの地方都市に滞在中、ホテルのスタッフさん達と談笑していて日本のアニメ話になったことがある。その流れから、ちょうどその頃に流行していた無料オンラインゲーム『WoT』(WORLD OF TANKS)の話が出た時、それまで黙々と天井を修理をしていたちょっとコワそうなお兄さんが「そのゲームめっちゃやってる!」と満面の笑みで会話に参加してきて爆笑したことがある。
さすがはアニメ(アニメーション)。
「魂、動物、生命」という anima(ラテン語)が語源なだけに世界を楽しく溶かしてくれる。
というわけで今日は、東欧諸国の日本アニメファンについて記してみるよ。
東欧諸国のアニメ事情
アイキャッチ画像は、コーカサス三国のひとつジョージア(元グルジア)の地下鉄ホームで「日本人?」と話しかけてきた女の子が着ていたパーカー。
「日本、大好きなの!」と言う彼女のパーカーは『ベルセルク』だった!


アゼルバイジャンでは、『進撃の巨人』のセリフ「心臓を捧げよ」を真似してくれた女の子がいた。10代の彼女の周りに日本のアニメファンはおらず、「自分みたいな趣味を持つ層はアゼルバイジャンではマイノリティ(少数派)です」と言っていたのが印象的だった。
ロシアの古都サンクトペテルブルクのゲストハウスに滞在した時は、チェックインのパスポートを見た瞬間に宿のスタッフやその友達10人くらいが「日本から⁉︎」と集まってきた。みんな、日本のアニメファンで「日本、行ってみたいです!」と言っていた。
日本でも。単発バイトでニセコのホテルに行った時、一緒になった留学中のロシア人の子の腕にカラフルなジブリのタトゥーが入っていた!

サンクトペテルブルクで入れたというタトゥー。トトロにカオナシ、日本の和彫に通じる色彩のトーンも美しい。
東欧諸国の日本のアニメファンの情熱に触れるたび、その想いに胸が熱くなる。
東欧各国のアニメイベントを見てみよう
東欧各国のアニメイベントについて見てみよう。
イースト・ヨーロピアン・コミコン(East European Comic Con)は、ルーマニアの首都ブカレストで開催される東ヨーロッパ最大級のカルチャーイベントだ。
2013年、初開催時の来場者数9,400人が、10年後の2023年には5万2,500人になった!アニメや漫画、ゲーム、アメリカンコミックの展示販売。人気ドラマや映画の俳優がゲストで来場、日本文化体験ゾーンも設置され、アニメファンと日本文化ファンの両方を魅了している。
公式Instagram: https://www.instagram.com/comiccon.romania/
ルーマニアにはもう一つ、2007年から続く「NIJIKON(ニジコン)」という日本のアニメイベントもあり、コスプレ大会やアニメ上映、グッズ販売などに多くのファンが熱狂している。https://youtu.be/iVpKrbUHxe8?si=Cn0utIDG95S6MsEi
旧ユーゴスラビアの国・セルビアの首都ベオグラードには、日本のアニメやポップカルチャー愛好家で2007年に設立されたアニメ同人会「サクラバナ」がある。
アニメや漫画を愛好する人々が集い、コスプレ大会やワークショップなど、定期的に日本作品に特化したイベントを開催している。
バルト三国のひとつエストニアの首都タリンでは、毎年「Jaapani Animatsiooni Filmifestival 日本アニメーション映画祭(JAFF)」が開催されている。
日本のアニメ映画が多数上映されるこの映画祭は、子どもから大人まで幅広い層に支持され、日本文化への関心を高める一助となっている。
エストニアと同じバルト三国のラトビアには、日本アニメが大好きな Sergejs Parvatkins(セルゲユス)さんが高校生の時に立ち上げた UniConという非営利団体がある。
ラトビア最大のアニメイベントでは、日本のアニメ、コスプレのほか、K-POPなどアジアのポップカルチャーを網羅した多様なジャンルで毎年多くの参加者を集めている。
『もぐらのクルテク』や人形アニメーションなど独自のアニメーション文化を持つ国チェコ。地方都市ブルノでは2004年に始まったチェコ最古のアニメコンベンション Animefest が開催されている。アニメ上映、ワークショップ、コスプレコンテストなど、多岐にわたるプログラムが特徴で、欧州コスプレギャザリングの一部としても機能している。
ドイツでは、各地の歴史的建築物で舞踏会が開催され、社交ダンスやコンテストが行われている。中でもエレガントなコスプレのドレスコードが求められる DoKomiコスプレ舞踏会では、同時開催の痛車展覧会もかなりの見応えだ。
痛車(いたしゃ)=ITASHAは、アニメや漫画、ゲームなどのキャラクターを車のボディにペイントした車のこと。東欧ではないけれど、イタリアにもITASHAシーンがあり、ITASHA ITALY(イタシャイタリー)という有名な痛車のイベントがある。
またドイツには、aniMUC というミュンヘン近郊のフュルステンフェルトで毎年春に開催されるアニメファンイベントがある。ステージパフォーマンス、ワークショップ、物販エリアなどがあり、コスプレイヤーによるダンスバトルやミュージカルも行われる。
ヨーグルトでおなじみの国ブルガリアでも日本のアニメやマンガの認知度は高く、国内にはマンガアカデミー(Манга Академия)なるものが存在する。日本のアニメーションに影響を受けた多くの若者が漫画家やイラストレーターを目指して学んでいる。ブルガリアではアンナ・リケツチェヴァという漫画家が有名で、日本とヨーロッパのマンガにインスパイアされたオリジナル作品を手がけている。
ロシアは、自分が旅した中でもかなり日本のアニメ熱の高さを感じた国だ。ニセコでジブリタトゥーを入れてる留学生の女の子もいたし。
2014年、ノボシビルスクで開催されたシベリア初の本格的なコスプレ大会がある。その名もHanabi Fest。日本のアニメキャラクターになりきったパフォーマンスが披露され、そのクオリティの高さには目を見張るものがある。
またロシアでは『NARUTO』や『涼宮ハルヒの憂鬱』などがテレビ放送されていたり、数千人規模の「アニメフェスティバル」や、クラブを貸し切った「アニメパーティー」などのイベントが頻繁に開催されている。
東欧で人気の日本アニメ10選(*ゲームも入ってます)
- 進撃の巨人
- ソードアート・オンライン
- 鋼の錬金術師
- ナルト
- ワンピース
- ポケットモンスター
- 黒子のバスケ
- キルラキル KILL la KILL
- デスノート
- 犬夜叉
ランキング外には『ドラゴンボール』や『るろうに剣心』『エヴァンゲリオン』『攻殻機動隊』や『AKIRA アキラ』。また漫画家では「松本零士」作品など。『千と千尋の神隠し』などジブリ作品も並ぶ。
東欧諸国を旅行中、いろんな場所でアニメ好きに出会った。「日本のアニメの魅力は?」と聞いたら「ストーリー性!」と答えてくれた人が多かった。私は全てのアニメを見ている訳ではないけれど、あぁ国境を超えて響き合っているんだなぁ」と嬉しくなった。
ソードアート・オンラインなどゲームのキャラクターはコスプレでも人気で、クオリティの高さに驚かされる。日本のアニメは東欧だけではなく、世界中の文化交流の架け橋なんだなと感じる瞬間が何度もあった。各地で開催されるイベントやファンコミュニティの活動を通じて、日本と東欧諸国との文化的な結びつきはこれからも深まる気がする。
また、東欧のアニメファンの間では、日本のアニメに登場する特定の文化や風習(お弁当とか)に対する関心も高まっている。(チェコの日本人向け小売店で、お弁当箱を選ぶチェコ人を見かけたことがあるよ)
アニメを通じて日本語を覚え、学ぶ人の多さ。神道や寺社仏閣などの建造物や歴史、文化に深い興味関心を抱く層も増えている。ファンが独自に日本のアニメソングをカバーしたり、初音ミクなどのボカロ、ファンアートを制作したり。二次創造も含めると創作活動も盛んに行われている。
生命を吹き込んだアニメの世界は国境を超え、人々の心を感動で揺さぶるんだな。って思うと、その現象にまた感動してしまうね。
アニメ繋がりの記事はこれ!
ロンギヌスの槍とエヴァンゲリオン
text: OMOMUKI magazine/ CIMACUMA SAORI