ここ10年ほどでVIO脱毛の広告をやたらと目にするようになった。
ひと昔前の脱毛は、両わき、腕、足、Vラインといった人の目に触れるパーツがメインだったけれど、巷では下半身の隠された部分が徐々にオープンになってきているようだ。
以前30代のモデルさんたちとおしゃべりしたときに、4人のうち3人がハイジニーナへ脱毛中とのことだった。
さすが美意識の高い女子たちだと感心したと同時に、VIO脱毛の体験談を事細かに教えてもらったので、自分も挑戦するハードルが少し下がった気がした。
なぜなら「介護脱毛」という言葉が生まれたように、自分の老後を想定してアンダーヘアを脱毛する40代以上の女性たちが増えているからだ。
老化や病気など人の手を借りなければ生きられない日が訪れたら、オムツを履くことになり排泄の処理もお願いしなければならない。
その際に毛があるのとないのとでは、衛生面で差が出てしまうのではないかと不安がよぎる。
また閉経後にホルモンバランスによって女性もヒゲが生えてくることがあるので、今後眼も老化して顔の産毛処理ができなくなってしまったら、オバさんではなくオジさんになってしまう。
オジさん化はとにかく避けたい。
自分がどんな死に方をするかはわからないけれど、自分の目の黒いうちは美しくありたいという美意識から、老後に向けて全身脱毛したくなる気持ちがむくむくと湧いてくるのだ。
そんな悩める日本人女性と対極にあるのが、イスラム圏の女性たちの脱毛事情だ。
彼女たちはハイジニーナがデフォルトで、それは女性だけではなく男性も同様(ハイジニーナとはVIOの全脱毛のことである。)。
これはイスラム教の教えのなかに、わき毛とデリケートゾーンを脱毛して清潔に保つことが定められているためだ。
女性たちは、砂糖と水とレモンで手作りしたキャラメルワックス「シュガー」で脱毛するのが一般的だという。
ムダ毛は「汚いもの」という認識なので、女性も男性もつるつるにしていることが良しとされている(実際に見たことはないけれども)。
以前トルコのイスタンブールで、ちょっと崩れたイケメンに流暢な日本語で声をかけられた。
面倒なので韓国人のふりをしてやり過ごそうとしたら、イケメンは韓国語に切り替えて話しはじめ、無視したところ中国語に替えてきた。
アジア人専門のナンパ師の語学力に感心しつつも相手にせずスルーしたところ、滞在中何度も街中で出くわしてしまい、その都度スルーしていた。
すると彼のプライドを傷つけてしまったのか、あるとき逆上して日本語で卑猥な言葉を叫びはじめたのだ。
はや足でその場を立ち去る私の後ろ姿めがけて。
「オマエノカーチャン、〇〇〇〇ノクサレ〇〇〇で、オマエモオナジ〇〇〇〇ノクサレ〇〇〇ノクセニ、フザケンナヨ、バーカ、、、」
というようなガキのケンカの雄叫びのなかに、意味が分からなくて何だろうと引っかかっていたフレーズがあった。
「ニホンジンハ “ケ”ガ モジャモジャナノニ〇〇〇シテヤッテルンダカラ、オマエライイカゲンニ “ケ”ヲ ナクシヤガレ、、、、」
ゲス男が叫んでいるのはたぶん下の毛のことだと予想しつつも、なんで体毛の文句を言われてるんだろう、私じゃなくて本人に言えよ、と思ったことをよく覚えている。
その後イスラム教徒のアンダーヘア事情を知ったとき、ようやく彼の発言が腑に落ちたのだった。
ちなみに調べてみたところ、草原なのは日本人女性だけではなく、韓国人&中国人女性も同様らしい。
アジア人でもモスリムはもちろんお手入れしていて、欧米人女性も草刈りしている人が多いようだ。
そもそも体毛の除去は石器時代に遡ることができる。
ノミやシラミの温床となる体毛をなくし、衛生的に過ごすことが目的だったようだ。
その後、古代シュメール文明にはじまり古代オリエント、古代エジプト文明でも、衛生面と併せて宗教的な側面から除毛&脱毛の風習が根付いていた。
余談だが、宗教的な側面というのは「体毛は不浄である」「髪の毛から善と悪の精が出入りする」という信仰に依るものだったと考えられていた。
たとえば古代エジプトの神官は、髪を剃り体毛を除去して御神事を行なっていた。
日本のお坊さんも剃髪しているので、「髪に霊力が宿るのか」「髪に霊力が宿るならなぜ剃髪するのか」を元僧侶で霊能力者の方に質問してみた。
すると当たり前という感じで「髪には霊力が宿ります」との返答だった。
古代日本の祭祀王は女性で、産まれてから赤ちゃんの頃に一度髪を剃って筆にし、その後は一度も切らずに伸ばし続けて霊力を保っていたという。
そして「髪の毛から善と悪の精が出入りする」というのも迷信ではなく本当のことで、僧侶や神官が剃髪するのはアンテナに余計なものが付着しないようにするためだと。
ツアー中に尋ねたのでこれ以上詳しく聞けなかったが(『御[3み]代[4よ]出づ[5い]ど真ん中ツアー in 香川』に参加)、おそらく祭祀王は神と繋がる力を高めるために髪を伸ばし、僧侶&神官は善も悪もあらゆる存在をキャッチするためのアンテナに魔が入り込まないよう剃髪するのだろう、と理解した。
その後古代エジプトでは、体毛のないつるつるの肌は美の象徴であるという思想へ発展し、王族や貴族以外の一般庶民にも体毛処理が広まっていったそうだ。
かのクレオパトラも、砂糖と蜂蜜と蜜蝋を練ったシュガーワックスで脱毛していたという記録が残っている。
まとめると中東の脱毛文化はイスラム教以前から、その土地に根差した風習だったことが伺える。
さて日本では、どこまでハイジニーナが一般化されるのか今後の流れが気になるところである。
text: OMOMUKI MAGAZINE / CHAKA MAYO
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