ロシア・シベリア地方には、自然の恵みを活かした保存食の文化があります。
その中でもユニークなのが、若い松ぼっくりで作る「松ぼっくりジャム」です。
昨年の秋、シベリア産の松ぼっくりジャムを初めてダーチャで紹介しました。
「食べてみたかった!」という喜びの声が予想以上に多くて
待っていたのは自分だけではなかったという嬉しさと、
「早速、食べてみます!」という女性陣と「え、松だよね?木工で使う、、」と戸惑う男性陣との
反応の違いが顕著という、興味深さも伴いました。
一度、食べると大好物になる人が続出する松ぼっくりジャム。
ジャムといってもシロップに近いゆるさで、ロシアでは「ヴァレーニエ」と呼ばれます。
松ぼっくり、水、砂糖、レモン(クエン酸)だけを煮込むシンプルな保存食。
雪がとけたら若い松ぼっくりを集めて作ってみようと張り切っていましたが
松なら何でも良いわけではなく、ざんねんながら、しまくま堂の奥の森にある
トドマツは向かない種類の松でした。
調べてみると、地元シベリアで最も使われる松ぼっくりジャムに向くのは
朝鮮五葉松という松の種類。
シベリアンタイガーも、この松の実や葉を食べて長く厳しい冬を乗り越えているそうです。
日本だと、ゴヨウマツ、赤松、黒松と松葉茶で利用されるのと同じ種類ということが
判明しました。
庭木で植えられている純和風の印象がある渋い松、格式の高さには栄養価の高さも
付随していたことを発見し、何か昔の人の知恵にも触れたきがしました。
しかし、なかなか適した松が見当たらず。
知人の家の庭にはえる松は道路脇にはえていて、排気ガスを吸い込んでいそうで断念。
「昔ははえてたけど切っちゃった」という西洋風の庭にしたお宅も多く、
昨今の庭事情も知る結果となりました。
松ぼっくりジャムを作ることは難しいのか、、?と下向きになりそうでしたが
奇跡的に友人が、「少しだけどあったよ」と届けに来てくれました。
神よ、、!
というわけで今回、現地レシピを参考に実際に作ってみました。

材料(松ぼっくりジャム)
青い松ぼっくり(若いもの・やわらかいもの・1〜3cmくらいの大きさのもの)…500g(目安)
水 … 500ml
グラニュー糖 … 500〜600g(好みで調整)
レモン … 1個(スライス)
【レシピ】松ぼっくりジャム
1. 松ぼっくりの下処理
採取した松ぼっくりは、水でよく洗って泥や虫を取り除きます。
若くて柔らかいもの(手で潰せるくらい)がジャム向きです。

この松の内側にある種は松の実になりますが、まさかこの青い球果自体を煮込むとは。
2. 煮出す
鍋に松ぼっくりと水を入れ、中火で30〜40分ほど煮ます。
松の香りが立ち、煮汁が茶色っぽくなってきたらOK。

だんだん、赤くなってきました。
3. 松ぼっくりを一度取り出す
煮出しが終わったら、松ぼっくりを一度取り出しておきます(このとき取り除いたままでも、戻しても可)。
4. 煮汁に砂糖とレモンを加える
煮汁にグラニュー糖とスライスしたレモンを加え、弱火でとろみがつくまでコトコト煮詰めます(30〜40分程度)。

松ぼっくりがなかなか赤くなりきらないので、取り出さずにそのまま砂糖を加えて煮詰めレモンを加えてさらに煮詰めたら、透明度が低くなってしまいました。
5. 松ぼっくりを戻して仕上げる
取り出しておいた松ぼっくりを再び鍋に戻し、さらに10〜15分煮て完成。
熱いうちに煮沸消毒した瓶に詰めて保存しましょう。
松の葉サイダー(おまけ)
松の葉 … 用意した瓶に入るくらい
砂糖 … 松の葉と同等
水 … 瓶いっぱいにたっぷり
上記のレシピで作りましたが、レシピは色々あります。
松の葉 … 用意した瓶に入るくらい
レモン果汁 … 適宜
砂糖(または、はちみつ) … 適宜
水または炭酸水 … 適宜

日当たりの良い場所で発酵中
【作り方】
- 松の葉をよく洗って瓶に入れます。
*刻んでもOK(苦味が気になる場合は湯通ししてもOK)。 - 保存瓶に松の葉・砂糖(orレモン果汁・はちみつ)を入れてよく混ぜる。
- 水をたっぷり入れて蓋をする(炭酸水のレシピもあり)
4.2〜3日、日当たりのよい場所において発酵させると、シュワシュワと微炭酸になります。

シュワシュワと微炭酸に!
松の葉の根元の茶色い部分が外れて浮かんでくるので、一度こすのがオススメ。
もしくは、瓶に葉を入れる時に外しておく。
松ぼっくりジャムの食べ方
松ぼっくりや松の葉を使った保存食は、喉に良い(咳や痰を抑える)、
抗酸化作用がある、ビタミンを豊富に含むなど栄養価が高く、まさに「自然からの贈り物」です。
「食べるのはちょっとドキドキする」という方に、いちばん最初に試してほしいのが
出来上がった松ぼっくりジャムをお湯で割ってお茶にする飲み方。

甘くて、松ぼっくりが柔らかくて、松ぼっくりを噛むと口の中にふわっと森林が広がります。松やにの香りと味、少しの苦味を感じて爽やかです。
春〜初夏にかけて若い松ぼっくりや新芽が手に入る時期、ぜひ自然とつながる保存食づくりを体験してみてください。


シリアルなどに加えたり(この日は豆乳で)、パンケーキにかけたり。
ヨーグルトやアイスクリームにも合います。
シロップだけをパンケーキ用の粉に混ぜて焼くのもおすすめです。
個人的には、もっと何度も試して「これがうちの味」というレシピを作りたいです。
松ぼっくりがたくさんある環境の方はぜひ、春〜初夏にかけて実る若い松ぼっくりで
自然とつながる保存食づくりを体験してみてください!
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