シリーズ第4回目は、パレスチナのアーティストをテーマにご紹介します。
もちろん中東雑貨CHAKAの店主 真世の主観たっぷりの選曲なので悪しからず。
パレスチナは中東に位置する地域で、歴史的にはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地として知られています。
現在のパレスチナは、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を中心としたエリアを指し、東エルサレムを含めた領土をパレスチナ自治政府が統治。
1948年のイスラエル建国以降、パレスチナ人の多くは難民となり、土地の占有や入植地拡大などをめぐって長年にわたる対立が続いています。
特にガザ地区では封鎖や武力衝突が頻発し、2023年10月7日にはじまったハマスとイスラエルの戦争によって人道的危機が深刻化。
ガザ保健省によると、これまでにパレスチナ人の死者数は約51,000人に達し、その半数以上が女性と子どもです(2025年4月現在)。
歴史はどこを切り取るかで見方が大きく変わるものですが、それにしても近代のパレスチナの歴史は胸の痛くなる状況にあります。
ただ文化はミックスされることによって、新しいものが生み出されるのも歴史的な側面のひとつ。
植民地として西側に支配されたさまざまな国では、双方の文化が混じり合って洗練されたアートが誕生しました。
パレスチナ×イスラエル、パレスチナ×アメリカなど、未来の光を感じるハイブリッド・カルチャーなアーティストや伝統を尊ぶ音楽家など、パレスチナのエネルギーを感じる楽曲をセレクトしました。
オーディション番組で一躍スターダムへ!
ムハンマド・アッサーフ(Mohammed Assaf)は、パレスチナ・ガザ出身のポップシンガー。
2013年に中東の人気オーディション番組『アラブ・アイドル』第2シーズンで優勝し、一躍有名になりました。
彼の実話を元にした映画『歌声にのった少年』は、私も大好きな映画です。
劇中でムハンマド・アッサーフの歌声を担当しているのは、なんと本人なんですよ。
彼の音楽は、伝統的なパレスチナ音楽と現代的なアラブポップを融合させ、パレスチナの文化と希望を世界に伝えています。
また、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)から親善大使に任命され、パレスチナの平和と文化の象徴として国際的に活動。
彼の成功は、多くのパレスチナ人にとって希望の象徴となっています。
現在、アッサーフはドバイを拠点に音楽活動を続けており、最新のシングル『Salam Lighaza(ガザへの平和)』をリリースするなど、パレスチナの文化や状況を世界に伝える活動を行っています。
伝統とモダンの橋渡しをするマルチアーティスト
クリスティン・ザイード(Christine Zayed)は、パレスチナ生まれのカーヌーン奏者、作曲家、ヴォーカリスト。
幼少期をエルサレムとラマッラで過ごし、アラブ音楽を学びました。
その後、アンマンでオーケストラに参加し、21歳でフランスに渡ってエドガー・ヴァレーズ音楽院で音楽学を修め、現在は同音楽院で教鞭を執っています。
2024年11月にリリースされた初のソロアルバム『Kama Kuntu(私がかつてあったもの)』は、アラブ古典音楽と現代的な音楽要素を融合させた作品で、カーヌーンと彼女の歌声が中心となっています。
今回ご紹介する『Gharimi』はアラビア語で「私の敵」や「恋の相手」といった意味をもち、愛と葛藤、喪失と再生といった複雑な感情を描いています。
この楽曲は、アラブ古典音楽のマカームに則り、ザイードのカーヌーン演奏と歌声が、詩的な歌詞とともに深い感情を表現しています。
パレスチナのビヨンセ?それともリアーナ?
エリアナ(Elyanna)は、パレスチナ系チリ人のシンガーであり、現在はアメリカを拠点に活動するアラビック・ポップの新星です♪
ナザレで生まれ、10代でアメリカへ移住。
アラビア語での歌唱にこだわりながらも、R&Bやラテンの要素を取り入れた次世代サウンドを展開しています。
2023年には世界的音楽フェス「コーチェラ」に出演し、アラビア語のみで歌う初のアーティストとして注目を集めました。
彼女の音楽は恋愛やアイデンティティ、文化の誇りをテーマにしており、ファッション面でもパレスチナの伝統をアイコンとして取り入れたスタイルが話題に。
期待のアラブ女性アーティストとして、ワールドワイドに活躍中です。
エリアナの楽曲とPVはとにかく私のツボで、アラビックとR&Bのミックス加減が絶妙だし、めちゃくちゃかわいいのでぜひご視聴あれ❤
パレスチナ×イスラエルの希望の星
新世代のソーシャル・プロジェクト DUGRI(ドゥグリ)は、パレスチナ人ラッパーのSameh “SAZ” Zakout(サメフ・ザクート)とイスラエル人教育者のUriya Rosenman(ウリヤ・ローゼンマン)による共同プロジェクト。
音楽と対話を通じて、イスラエルとパレスチナの間に存在する偏見や誤解を乗り越え、共通の理解を築くことを目指しています。
またDUGRIは、ユダヤ人とアラブ人の子どもたちを対象にした教育プログラムを展開。
音楽と対話を通じて、互いの文化や視点を理解し合うことを目的としています。
この取り組みは、共生社会の構築に向けた一歩として注目されています。
今回ご紹介するDUGRIの楽曲『Let’s Talk Straight』は、イスラエル人とパレスチナ人の間にある深い対立や偏見を”正直に、率直に”語り合うことをテーマにした、非常に挑戦的かつ対話的な作品です。
この曲は、ステレオタイプ・差別的発言・歴史的な怒りや被害意識を、あえてお互いの言葉でぶつけ合う構成になっています。
冒頭では、ユダヤ人とアラブ人の間にある「不信感」や「怒り」がそのままの言葉で交わされ、聞いていて痛みを感じるほどリアルです。
(歌詞を和訳してくれているサイトを発見!)
最終的に2人のラッパーは、「相手の苦しみを否定せず、共にこの土地で未来を築こう」というメッセージにたどり着きます。
パレスチナ初のHIPHOPグループと言えば、1999年結成のDAM(ダム)が有名です。
DAMはアメリカのHIPHOPがかつてそうであったように、過酷な社会環境をリリックにしたメッセージ性強いラップが特徴で、映画『自由と壁とヒップホップ』にも出演。
HIPHOP部門からDAMとDUGRIのどちらを紹介しようか迷った末、今回は一歩統合へ進んだDUGRIをセレクトしました。
音楽でめぐる中東の旅/パレスチナ編、いかがでしたでしょうか。
お気に入りの音楽を見つけてもらえるとうれしいです。
次回はどこの国にしようか迷い中なので、リクエストがあればお知らせくださいね。
お待ちしてます!
text: OMOMUKI magazine / CHAKA MAYO
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