ふだんの暮らしにオフグリッドを取り入れている友人に、どうやっているのか見せてもらう機会があった。そういえば気軽に使ってるけど『オフグリッド』って言葉の意味、ちゃんと理解していなかったな。
『オフグリッド』(off grid)=『グリッド』送電網 +『オフ』接続されていない状態
電力会社の送電網に接続せずに、電力を自給自足している状態のこと。
電線の向こうに見える太陽。この太陽光を折りたたみ式のソーラーパネルを経て電力としてためている。
2枚のソーラーパネルを繋いでポータブルの家庭用蓄電池に充電している。天気の良い日は数時間で蓄電できるという。ソーラーパネルは折りたたむと場所を取らないので持ち運びしやすい。春夏秋はもちろん、冬の雪上でも太陽の光さえ出ていれば充電できるそう!雪国の民にとってそれはとても大事なポイントだ。
ちなみにこのソーラーパネルは中国製。200W×2枚で5万円ほどだったそう。パネルも各種メーカーが様々なクオリティ(ピンキリ)で商品を出している。
ポータブル電源(家庭用蓄電池)は2200ワット(22アンペア)。一般家庭のブレーカーほどの容量だ。セール価格12〜13万円ほどで購入したそうだ。
友人はサウンドエンジニアで、レコーディングや野外イベントで音響の仕事もする。ので、野外で使用する際はこのワット数の蓄電池で音響機材やPC、スピーカーなどをつないで使用する。ソーラーパネルで太陽光を発電し、ポータブル電源に充電(蓄電)して電力として使用するので問題なく様々な電化製品が使えるそうだ。
電力をかなり消耗するのでは?と聞くと、意外にも、音響設備はそこまで電力を食う方ではなく、消耗がより早いのはドライヤーやアイロン、電気ケトルといった熱系の家電だそうだ。
友人はふだんの暮らしでは音響設備とPCのほか、照明やアロマデフューザー、炊飯器などの生活家電をこの容量の蓄電池で賄っている。
日常生活でそこまで電力を必要としないライフスタイルなら、蓄電池の容量1000ワットでもいけるとのこと。ちなみに1000ワットのポータブル電源なら、これもセール期間中ならメーカーにもよるが4〜8万円くらいで購入できるそうだ。
このパネルの数字表示で、現在何ワット充電中で、あと何時間で100%充電になるか?の情報と合わせて、現在どれだけ電力を使用しているかも同時にわかる。
使用する蓄電池の容量(ワット数)や価格(セールを上手に利用するなど)、どのメーカーの商品を使うかにもよるけれど、15〜30万円程度の予算があれば、個人もしくは一般家庭で太陽光発電する道具一式が揃うというから興味深い。蓄電池の電力容量を下げれば(例えば500W以下など)もっと予算を抑えることも可能だ。
太陽光発電の電力の場合、コンセント経由の(電力会社の)電力の場合、それぞれの音の聞こえ方、光の見え方を実際に体感するおもしろい実験をしてくれた。
写真で見ると違いがよくわからないかもしれないけれど…
◾️コンセント経由の光→ 照明がついた瞬間、目に刺さるようなとても眩しい光に見えた。照明器具は温かみある電球色なのに、白っぽくて冷たい、まるで病院にいるような灯りを感じた。
◾️太陽光(蓄電池)経由の光→ 照明がついた瞬間、ほわぁと暖かい陽だまりのような光に見えた。こう記すと「またまた」と言いたくなる人もいると思うけれど、本当に灯りの種類が全く別物だった!
音の場合はどうだったかというと。
普段いつも自分が聴いている音楽で比較する方が、自身の耳で判別しやすいということで、WHITE ASH の INSIDE(ガッチャマンクラウズ 2015年のテーマ曲)を試聴曲に選んだ。この曲はボーカル『のび太』の伸びやかな声が大好きなのだ。
◾️コンセント経由の音→ ボーカルも演奏も、バンドサウンド全体に、聴こえるか聴こえないかわからないレベルの、雑味というかノイズが多いなと感じた。(これは太陽光電源の音質と比較して初めて気付いた程度のノイズ。)
◾️太陽光(蓄電池)経由の音→ のび太の声の通りが良くなった。ギターやベースのノイズが減ったように感じた。透明感と分離感のあるクリアで、通りの良いサウンドだ。耳に刺さるような音の角が取れた、優しく滑らかな響きにも感じる。
音に関しては、サウンドエンジニアとして常日頃、音と接している友人ほど違いは感じ取れなかったかもしれない。が、音の質(ノイズが多い少ない)はハッキリと違うと思った。ロックではなく、クラシックやギターソロなど音楽のジャンルが変わるとさらに聞こえ方の違いがもっとあったのかもしれない。
何にせよ、光の見え方の差にはたまげた。
そのほか、電源ケーブルドラムや手動式の小型ポータブルバッテリーなど、持っていると良い物も見せてもらった。
充電池(二次電池、蓄電池)はわりと普及しているので使用している人も多いかもしれない便利アイテム。でも、2ケース常備してあるのはさすがエンジニアという感じ。充電池も、太陽光発電による電気を、ポータブル電源から得て充電している。
地震や豪雨などの災害に備えるのはもちろんだけど、キャンプやアウトドア、車中泊旅でもこれだけの装備があれば自由度と利便性がぐんと上がると思った。自分なら「ドライブして気に入った場所に車を停めて景色を眺めながらノマドワーク(PC仕事)できるな」とか。WEB更新やzoom星読みを好きな場所でできたらさらに仕事がはかどりそうでワクワクする。
ガス会社が電力を供給したり、電力会社を選べる時代に突入した。さらに先の選択肢としてオフグリッドという電力源が増えるとそれだけ安心感も増す。2025年7月にどうのとか、風の時代は個人発信が容易な分、不安を煽るような情報も錯綜する。そういう風評に惑わされないためにも知恵は分かちあいたい。物理的な備えや、アクションを取ることで得られる安心感というものが確かに存在する。友人よ、シェアありがとう。
参考までに
text: OMOMUKI /CIMACUMA SAORI
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