アルメニアの教会に一歩足を踏み入れると、深みのある穏やかな香りが広がっていた。
教会内では絶えず乳香(フランキンセンス)を焚き続け、空間の浄化と礼拝に訪れる人たちの心身の浄化を行っていた。
乳香はいにしえより神聖なお香として、古代エジプトでは神々に捧げられていた。
神殿、王墓、葬祭殿など多くの遺跡でその様子を伺い知ることができる。
神官は儀式のなかで、また王が自身の神性を高めるために、香りの力によって深い瞑想状態に入り、神々や高次存在とつながってご神託を受けていたのだろう。
日本なら巫女、先住民族ならシャーマン、現代ならチャネラーといった人たちのように。
以前ディープなリトリートに参加したときに、日本にも自生するある木の樹脂を焚いて変性意識に入っていったことがある。
ホロトロピック・ブリージングという特殊な呼吸方法で変性意識状態になり、潜在意識の深層から宇宙で死と再生のイニシエーションを受けた。
ある木の樹脂を焚くことで、明晰性を保ったまま変性意識を深めることができるのだ。
乳香も芳香成分が変性意識を深めるからこそ、古来より特別なものとして大切にされてきたように思う。
また紀元前2500年頃の古代メソポタミアでは、乳香は神に捧げ悪霊を追い払うために用いられたという記録が残っている。
精神からは邪気を、肉体からは病を、また悪霊に憑依された人の悪魔祓いをするために、乳香を使って強力な浄化を行っていた。
シリアで悪魔祓いの儀式に立ち会ったという知人の体験談だ。
シリア人の少年に憑依した悪霊が、禍々しい男の声で「地獄でお前の親父に会ったぞ」と日本語で脅しをかけてきたという。
ちょうどその少し前に、知人の父親が亡くなったばかりだったのだ。
悪魔祓いでは、何の悪霊なのか名前を特定して呼ぶことで、力を弱めて祓うことができる。
サイキックの知人は悪霊に臆することなく直感で名前を呼び、少年から悪魔を祓ったという。
ちなみに現代の悪魔祓いの儀式にも乳香を使っているそうだ。
新約聖書ではイエス・キリストの誕生を祝して、東方の三賢者が「黄金」「乳香」「没薬(ミルラ)」を捧げたと記されている。
黄金は「王に贈るもの」、乳香は「神に贈るもの」、没薬は「死者に贈るもの」と解釈されている。
古代文明でもキリスト教でも、またユダヤ教やイスラム教でも、乳香は神へ捧げる神聖なものという位置づけにあり、日本の場合は塩や大麻が近いのかもしれない。
乳香とはムクロジ目カンラン科ボスウェリア属の樹木から分泌される樹脂だ。
この樹脂の塊を焚くと、森のなかにいるような静謐さ、穏やかな甘さとあたたかさのある奥深い香りが立ちのぼる。
この乳香の木は異常気象や採りすぎによって、50年後には90%が死滅するとのデータもあるそうだ。
過去には収穫量が減少して金と同等の価値をもっていたとされる乳香だが、将来的には金より貴重なお香になる可能性もある。
今回は私の好みで記事がスピリチュアルな方向へ寄ってしまったが、念のため乳香は決してオカルトなものではない(笑)。
実際に乳香を試してみたい方はこちらからどうぞ。
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