私(CIMACUMA SAORI)が拠点にしているダーチャ(しまくま堂)では
ロシア産のお茶やハチミツを紹介しています。
中には日本であまり馴染みのない植物を使ったものもあって
その一つがよく「どんな味ですか?」と聞かれる
『サジーベリー(オブレピハ)』です。
ロシアやユーラシア大陸全域に住む人にとって欠かせない
SUPER FOOD(スーパーフード)サジーベリーについて、
今日はたっぷり紹介しまっくま。
サジーベリー(オブレピハ)って何?
オ ブ レ ピ ハ
どこかのおまじないのような響きを持つ
オブレピハ=サジーベリーっていったい何だ??
というわけで、
まずはサジーベリーについての基礎知識から!
サジーベリーについて
英名:saji(サジー)、Sea Buckthorn(シーバックソーン)
ロシア名:облепиха(オブレピハ)
和名:サジー/サジーベリー
(*スナジグミこと学名:Elaeagnus trifloraもグミ科でサジーと似ているが、違う種)
原産:ユーラシア大陸全域
科:グミ科ヒッポファエ属/落葉低木
学名:Hippophae rhamnoides(ヒッポファエ・ラムノイデス)
「馬をキラキラさせる樹」の意。ギリシャ神話ではユニコーンの大好物として描かれる。
7千万年~2億年前から生存する最古の植物のひとつ
小さなオレンジ色の実がたわわになっていますね。
もしサジーベリーのことを知らずにこの果実を見つけたら
きれいな実の色に「おぉ!」と感動するでしょうね。

この写真の綺麗なオレンジ色の
果実がサジーベリーです。
見た目はとても美味しそう!
出典:Wikipedia Russia
歴史 ロシアとソビエト時代のサジーベリー
サジーベリーと人類の歴史は数千年にわたります。
古代ギリシャでは「健康維持の秘訣はサジーベリーの実」として珍重されました。
学名「馬をキラキラさせる樹」もその効果を実証しているように思います。
長く厳しい冬のあるシベリアや北方ロシアなど過酷な環境に住む人々にとって、
ビタミンやミネラル等の栄養素が豊富なサジーベリーは長寿や健康を保つ上では
必須の栄養源でした。
ソビエト時代のロシアでは、政府が「遠征や軍事活動における兵士や労働者の栄養補助食品」
として、サジーベリーを活用しました。国を挙げてサジーベリーの恩恵を受けるため
もともと自生していた以外にも、シベリアを含む北方ロシア圏にはサジーベリー栽培を
奨励する政策がとられました。
実際に、サジーベリーのおかげで戦争や遠征での軍人や兵士の体力維持率と生存率が
向上したといいます。まぁおそロシア的なエピソードではありますが。
サジーベリーの種からとれるオイル(油)には美肌効果や抗酸化作用があったため
医療の現場や化粧品にも使用されました。
サジーベリーの効果効能
厳冬のシベリア、労働者諸君、兵役にある人々の生存率をあげたというエピソードだけでも
おそロシアらしい「すご過ぎる」感がありますが、サジーベリーの栄養価の高さは
「自然の薬箱」とも称されるほど重宝されてきた歴史があります。
具体的に、サジーベリーの果実や葉、種子に含まれる栄養成分と効果って
どういうものがあるんだろう?というわけで、調べてみたら。
聞いたことのない成分がいっぱい!
しかも、すごい種類と数でした。
サジーベリーに含まれる栄養素(代表的なもの)
・ビタミンC 若々しさを維持する美容成分が豊富
・ビタミンE、フラボノイド 肌を健康に保つ
・フィトステロール 抗酸化作用、抗炎症機能を持つ
・鉄分 貧血の改善
このほか、含まれている栄養素
カルシウム、ケルセチン、マグネシウム、葉酸、リンゴ酸、βカロテン、ルテイン、
リコピン、キナ酸、たんぱく質、ビタミンA、カリウム、食物繊維、亜鉛、ビタミンK1、
セリン、マンガン、ニッケル、リン、イソラムネチン、ナトリウム、ルチン、モリブデン、
銅、イソロイシン、ビオチン、パントテン酸、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、
ロイシン、脂質、糖質、ペクチン、チロシン、メチオニン、パリン、スレオニン、
トリプトファン、アルギニン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、
アスパラギン酸、シスチン、αカロテン、βクリプトキサンチン
主な効能はこちら
免疫力の強化
サジーベリーにはビタミンCが豊富に含まれ、免疫力を高め、風邪やインフルエンザなどの予防に役立ちます。
抗酸化作用
ビタミンEやカロテノイド(β-カロテンなど)を多く含み、抗酸化作用を持ち、老化を防止する効果があります。
血行促進と皮膚の健康
オメガ7脂肪酸は、血流を改善し、皮膚の健康をサポートします。乾燥肌や湿疹などの皮膚トラブルに良いとされています。
肝機能の保護
サジーベリーには肝臓を保護する働きがあると言われます。特に肝臓の解毒作用を助ける成分が含まれていて、アルコールや脂肪肝に対する効果が期待されています。
心血管系の健康
サジーベリーはコレステロール値を下げ、心臓病や高血圧のリスクを軽減する可能性があります。
サジーベリーの食べ方と味
栄養価の高さは知られていましたが、サジーベリーの実は非常に酸味が強く、
「そのまま食べるのは難しい」ということで、様々な加工食品が生まれました。
代表的な食べ方
- ジュース
サジーベリーを使ったジュースは、爽やかな酸味と栄養価の高さから人気です。砂糖や蜂蜜を加えることで飲みやすくなります。 - ジャムやコンポート
サジーベリーの実をジャムやコンポートにすることで、甘みが加わり、食べやすくなります。パンに塗ったり、ヨーグルトに加えたりするのもおすすめです。 - サジーベリーオイル
サジーベリーオイルは、スキンケアやヘアケアにも使用されますが、食用オイルとしても使われることがあります。 - 乾燥させて使用
果実を乾燥させて、ハーブティーにしたり、サラダやスムージーのトッピングに使うことができます。 - はちみつと混ぜるホィップハニー
乾燥させた果実と蜂蜜を非加熱で混ぜた果実入り蜂蜜。これをスプーンですくって食べたり
お茶に溶かしたり、パンやヨーグルトのトッピングに使うことができます。
(しまくま堂で扱っています)


気になる味は?
サジーベリーの果実の味について調べると、
「強烈な酸味と苦味に渋みが少々」という複雑な表現が目につきます。
「酸っぱい!!苦い!渋い!」って感じかな?と思います。
「良薬口に苦し」という諺の通りですね。
栄養価の高さはソビエト政府のお墨付きですから
少しでも食べやすいよう保存を兼ねたレシピが増えたと想像します。
100%サジーベリー原液(エキス)だと飲みにくいので、
水やお湯で割って飲む人が多いのだと思います。
ダーチャ(しまくま堂)では、あえて甘みを加えない100%サジーベリーの
ジュースを楽しんでもらう(チャレンジしてもらうとも?)メニューを
用意しています。
「かぜ予防と美容に」と紹介すると、皆さん好奇心をもってオーダーしてくれます。
私のオススメは、100%サジーベリーエキスを炭酸で割って飲む
サジーベリー・ソーダです。
畑仕事などで疲れたときや真夏の気だるい暑さのときに、
このソーダを飲むと、とても快活な気分になります。
(*どうしてもサジーベリーの味が苦手な人には、アガぺシロップなど
冷たい飲み物にも溶ける甘みを加えて味を調整します)

どうですか、このきれいなオレンジ色!
目に鮮やかで
炭酸で割ると甘みがなくても
爽やかに飲めておすすめな
サジーベリーソーダです。
ソビエト時代、サジーベリーは宇宙飛行士と共に宇宙へ
ソビエト時代、サジーベリーの栄養価の高さは国家的に注目されて、
医療や栄養補助食品として幅広く利用されたという話をしましたが
宇宙開発に心血を注いだソビエトらしい逸話があります。
「宇宙飛行士がサジーベリードリンクを宇宙へ持ち込んだ」というものです。
「ソビエト 宇宙飛行士 宇宙 」と並んだキーワードに
心踊るというか、萌えるものがありますね。

во имя мира
平和の名のもとに
ソビエト時代のプロパガンダアートは
格好いいですね〜!
というわけで、
次の項では
宇宙飛行士とサジーベリーの逸話について紹介します。
宇宙飛行士が宇宙に持ち込んだサジーベリー
ソビエト時代の宇宙開発は、冷戦時代(VSアメリカ)の科学技術の先端を行くものでした。
バイコヌール宇宙基地(現在のカザフスタン)では数多の先駆的なミッションが
実施されました。
1961年 世界初の有人ロケット ボストーク1号のガガーリン
1963年『私はカモメ』の女性初の宇宙飛行士テレシコワ
60年代のソビエト宇宙開発には、華々しい歴史の立役者が揃っています。
彼ら宇宙飛行士の「宇宙での長期滞在をサポート」するために開発されたのが
原料100%サジーベリーの栄養ドリンク(ジュース)でした。
この栄養ドリンクを宇宙に最初に持って行ったのは
ボストーク2号(1961年)
ゲルマン・チトフ宇宙飛行士の時だと言われています。
厳冬で暮らす北方ロシアの人々、労働者、軍人、宇宙飛行士。
環境は様々ですが一様に言えることは「どこも過酷」ということでしょうか。
1960〜1980年代にかけソビエトでは、国家レベルでサジーベリーの
効能効果についての研究がなされたそうです。

人類初の宇宙飛行士
ユーリィ・ガガーリンを乗せた
ボストーク1号
Восток-1(東方1号)
宇宙空間では、微小重力や放射線、酸素の制限など、
地上とは異なる環境が宇宙飛行士の身体に負担をかけます。
特に長期間の宇宙滞在は、筋肉の萎縮、骨密度の低下、免疫力の低下を
引き起こすリスクがあり、これらを防ぐため特別な栄養補助食品が必要でした。
サジーベリードリンクは、こうした問題を軽減するために選ばれたものでした。
宇宙で実証されたサジーベリーの効果
宇宙にサジーベリードリンクを持ち込んだ宇宙飛行士たちの多くは、
宇宙空間という極限状態での健康維持の効果を実感していたといいます。
ビタミンC含有量の高さがピカイチ
→抗酸化作用、宇宙飛行士の免疫力を強化
オメガ7脂肪酸などの栄養素
→骨密度の維持、皮膚の健康
脂肪酸やアミノ酸
→栄養バランスの補完、宇宙飛行士の体調維持
宇宙開発チームは、宇宙飛行士たちの地球外での生存能力が高まると
確信し、栄養補助食品として、サジーベリードリンクを定期的に
摂取するよう推奨しました。「コレがあれば宇宙でも大丈夫!」という、
ある種の「サジーベリー信仰」が国家レベルであったことがうかがえます。
サジーベリーのこれから
ユーラシア大陸から地球を飛び出して、宇宙空間まで!
サジーベリーは人々の健康をサポートする重要な存在なんだなぁと
今回、記事にしたことで自分の理解も深まりました。
抗酸化作用、免疫力の強化、循環器系(心臓と血管・血液からなる)
の健康維持、美肌、皮膚の保護など体の内外に働きかける
サジーベリー。
自分がサジーベリー果実入はちみつやサジーベリーソーダを紹介している
ので、周りでじわじわ認知されつつある感触があります。
過酷な環境でも越冬し、通年で自生するサジーベリーの強健な性質から
国内でも、北海道や長野などの寒冷地帯、標高の高い場所を中心に
この薬効高い植物の栽培に取り組む農家が増えているそうです。
耐寒性を活かし、安定した収穫が可能になれば
サジーベリーが家庭菜園として楽しめる日も、そう遠くないかも?!
近年、ダーチャではブラックベリーの実を鹿に食べられ泣いていますが
「良薬口に苦し」なサジーベリーなら、もしや鹿も食べないかもしれない
という、淡い期待を抱いています。
text; OMOMUKI magazine/ CIMACUMA SAORI
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