宇宙の設計図を独占した者たち─フリーメーソン・薔薇十字団・黄金の夜明け団と生命の樹

Culture


「宇宙の設計図を知る者が、世界を動かせる」

第3回で、フリーメーソン・薔薇十字団・黄金の夜明け団という名前を出した。

カバラの知識を長年「秘密」にしてきた組織たちだ。

でも「秘密結社」と聞いて、怪しいとか、陰謀論とか、そういうところで止まってしまうのはもったいない。

なぜ彼らは生命の樹を独占しようとしたのか。
その知識で何をしようとしていたのか。

そこを紐解いていくと、「宇宙の設計図」がいかに強力なものだったかが見えてくる。


なぜ知識は隠されたのか

まずここからはじめたい。

カバラはもともと、口伝えのみで伝えられてきた知識だ。
文書に書いてはいけない。
選ばれた者にしか教えてはいけない。

その理由はシンプルだ。

この知識は強力すぎる
使い方を誤れば世界を破壊できる
だから準備のできた者にしか渡せない

でも時代が下るにつれ、もう一つの理由が加わっていく。

知識を独占することが、権力の維持につながる。

「宇宙の仕組みを知っている者」と「知らない者」の間には、埋めようのない差が生まれる。
その差が、支配と被支配の構造を生み出す。

一般の人が「宇宙の設計図」を知ってしまったら、その構造が丸見えになる。

だから隠された。

そういうことだと思う。


薔薇十字団─突然現れた「見えない結社」

1614年、ドイツに届いた謎の文書

1614年、ドイツで一冊の冊子が出まわりはじめた。

「ファーマ・フラテルニタティス」(兄弟団の名声)。

そこにはこう書いてあった。

「ヨーロッパ中の知識人たちよ。
我々、薔薇十字兄弟団は、新しい時代の夜明けのために立ち上がった。
カバラ・錬金術・自然の奥義を学んだ者は、我々に連絡せよ」

ヨーロッパ中の知識人が騒然とした。

「入りたい!」
「どこに連絡すれば?」

でも誰も、入会方法を知らなかった。

なぜなら、マニフェストに住所も連絡先も書いていなかったからだ。

最初から「見えない結社」だったのだ。

これが、薔薇十字団の謎めいた登場だった。

クリスチャン・ローゼンクロイツの伝説

マニフェストが語る創設者の物語がまた面白い。

クリスチャン・ローゼンクロイツ(1378〜1484年)という人物が、若くして中東・アラビア・エジプト・モロッコを旅し、イスラム・カバラ・錬金術の最高秘儀を学んだ。

ヨーロッパに戻り、8人の兄弟と秘密結社を設立。

そして死後120年、その墓が発見された。

完全に保存された遺体。
「見よ、我はここに葬られている」という碑文。
膨大な秘密文書。

この「発見」が、薔薇十字団復活のサインだったとマニフェストは語る。

薔薇と十字架が意味するもの

薔薇十字のシンボルは、カバラ的に読むとこうなる。

シンボルカバラ的意味
十字架(+)四元素・物質世界・苦難
薔薇(🌹)魂の開花・愛・神秘的知識
薔薇十字物質の苦難の中で魂が開花する

これはカバラのティクン(修復)そのものだ。

苦難の中でこそ、魂は開花する。

ルーミーが詩で語ったことと、まったく同じことをシンボルで表現している。

薔薇十字団が実際に動かしたもの

フランシス・ベーコン(1561〜1626年)
 →「ニュー・アトランティス」著述
 →理想的な科学共同体のビジョン
 →薔薇十字団との関係が指摘される

ロイヤル・ソサエティ(英国王立科学協会)
 →近代科学の発祥
 →創設者の多くが薔薇十字的思想を持っていた

ニュートン(1643〜1727年)
 →万有引力の発見で有名
 →実は錬金術・ヘルメス主義の熱心な研究者
 →生涯の著作の半分以上が神秘学関連

ニュートンの話、めっちゃ面白いんだよね。

「万有引力の法則を発見した科学者」として有名なニュートンが、実は錬金術と聖書の秘密解読に科学研究と同じか、それ以上の時間を費やしていた。

「上は下の如く」というヘルメス的世界観があったからこそ、「宇宙のすべてを貫く一つの法則」を探し続けられたのかもしれない。


フリーメーソン─世界最大の秘密結社

起源の謎

1717年、ロンドンにグランド・ロッジ(最高機関)が設立された。
これが近代フリーメーソンの公式なはじまりだ。

でも実際の起源については、いくつかの説がある。

内容
石工職人組合起源説大聖堂を建てた職人たちの組合が発展した
テンプル騎士団起源説1307年に解散させられた騎士団の生き残りが潜り込んだ
薔薇十字統合説薔薇十字的な知識人が石工組合の形式を借りて設立した
ソロモン神殿起源説神殿建築家ヒラム・アビフから連綿と続く伝統(内部の伝説)

ソロモン神殿と生命の樹

フリーメーソンの集会所(ロッジ)は、必ずソロモン神殿を模して設計される。

これが生命の樹と深くつながっている。

東側に祭壇
→ケテル(神の意志の方向)

入口の2本の柱:
「ヤキン」(右の柱)
=生命の樹の右柱(慈悲の柱・コクマー)

「ボアズ」(左の柱)
=生命の樹の左柱(厳格の柱・ビナー)

中央を歩く
=中央の柱(均衡)を歩む

ロッジに入ることそのものが、生命の樹の中心軸を歩む象徴的な儀式になっている。

33の階位と生命の樹の上昇

フリーメーソンは33の階位で構成されている。
上に行くほど、より深い知識が伝えられる。

階位対応セフィラ伝えられる内容
1〜3度(入門・職人・親方)マルクト〜イェソド「友愛団体」として入会。本当の教義はまだ伝えられない
4〜14度ネツァク〜ティファレトカバラ・ゲマトリアの基礎
15〜30度ケセド〜ゲブラー宇宙の秩序・セフィロトの深い理解
31〜33度(最高位)ビナー〜ケテル内容は厳秘。「神の本質」への接近とされる

一般会員は「友愛団体」しか知らされない。本当の教義は、上位階級にのみ伝えられる。

「親方(3度)」の死と復活の儀式

フリーメーソンの中で最も有名な儀式がある。

3度(親方)に昇進する時、候補者は棺に寝かされ「象徴的な死」を体験する。

棺に寝かされる(ヒラム・アビフとして「死」)
 ↓
グランドマスターに引き起こされる(「復活」)
 ↓
親方として生まれ変わる

これはエジプトのオシリス神話、キリストの復活、カバラの秘儀参入、シャーマニズムの「死と復活体験」─すべてと同じ構造だ。

マルクトでの「死」を経て、ティファレトへと「復活」する。

世界中の秘儀が、同じプロセスを踏んでいる。

フリーメーソンと近代史

アメリカ建国との関係:
独立宣言の署名者56人のうち
少なくとも9人がフリーメーソン

ジョージ・ワシントン(初代大統領)
ベンジャミン・フランクリン
他多数

1ドル札の「プロビデンスの目」:
三角形=上位三角(ケテル・コクマー・ビナー)
目=ダアト(隠れた知識)
「NOVUS ORDO SECLORUM」=「新しい世界秩序」

アメリカ建国自体が、カバラ的な理想国家建設のプロジェクトだったという説がある。

フランス革命のスローガン「自由・平等・博愛」も、生命の樹の三柱(慈悲・厳格・均衡)を政治的言語に翻訳したものだと読むこともできる。


黄金の夜明け団─カバラを完全統合した魔術結社

19世紀末イギリスの神秘主義ルネサンス

1888年、ロンドンでヘルメティック・オーダー・オブ・ザ・ゴールデン・ドーン(黄金の夜明け団)が設立された。

ヴィクトリア朝の「科学万能主義」への反動として、神秘主義・オカルトへの関心が爆発していた時代だ。

黄金の夜明け団の革命的な功績

それまでのカバラ・タロット・占星術・錬金術は、それぞれ別々の伝統として存在していた。

黄金の夜明け団が行ったのは、これらすべてを生命の樹という一つの骨格に統合することだ。

生命の樹の10セフィラ
 +
22のパス
 ↓
タロット大アルカナ22枚を22のパスに配置
タロット小アルカナをセフィラと四つの世界に配置
占星術の惑星をセフィラに配置
12星座を22のパスに配置
四元素(火水風土)を四つの世界に配置
天使・大天使をセフィラに配置
色・音・香り・宝石を各セフィラに対応

一つの完全な宇宙論が完成した。

現代の西洋スピリチュアルの「タロット・占星術・チャクラ・ヒーリング」のほぼすべては、ここから来ている。

黄金の夜明け団は、現代スピリチュアリティの「母」なのだ。

著名なメンバーたち

人物年代特徴
W.B.イェイツ1865〜1939年アイルランドの詩人・ノーベル文学賞受賞者。詩に薔薇十字的象徴が多数織り込まれている
アレイスター・クロウリー1875〜1947年「20世紀最大の魔術師」。黄金の夜明け団を経て独自の魔術体系「テレマ」を確立
イズラエル・リガルディ1907〜1985年黄金の夜明け団の全儀式を一般公開。「秘密を守るより知識を広めることが重要だ」という判断で

クロウリーの話は少し掘り下げたい。

「20世紀最大の悪魔主義者」と呼ばれ、かなり誤解されている人物だ。

彼の有名な言葉「汝の意志するところを行え、それが全律法である」は、カバラ的に読むとこういう意味になる。

「汝の本質的意志(ケテルの意志)に従って生きよ」

自我の欲求ではなく、魂の最も深いところにある「神の意志と一致した意志」に従って生きること。
それが彼の言いたいことだったのかもしれない。


3つの組織を一つの流れで読む

【薔薇十字団(17世紀)】
カバラ+錬金術+キリスト教神秘主義を統合
「見えない結社」として知識を保存
→近代科学の誕生に影響

 ↓

【フリーメーソン(17〜18世紀)】
生命の樹を儀式の骨格として採用
階位システムで知識を段階的に伝授
→近代国家・民主主義の誕生に影響

 ↓

【黄金の夜明け団(19世紀末)】
タロット・占星術・魔術を生命の樹に完全統合
知識の体系化・一般化が始まる
→現代スピリチュアリティの直接の祖先

封印が解け始めた理由

イズラエル・リガルディが黄金の夜明け団の全儀式を公開したのが、1937〜1940年。

それまで「秘密の知識」だったものが、初めて一般の人に届きはじめた。

そして本でしか知ることのできなかった知識が、インターネットの普及でその動きを加速させた。

TOLAND Vlogで三上編集長が語り、OMOMUKIのようなメディアで言語化される。

数百年間秘密にされてきた知識が、いままさに「民主化」されようとしている。


最後に、なぜいま、この知識が届くのか

フリーメーソンの入会儀礼には、こんな象徴的なシーンがある。

真っ暗な部屋に入れられた候補者に、一筋の光が差し込む。

その光を指して、こう告げられる。

これが光だ。
あなたはこれを探し求めてここに来た

カバラが「封印されてきた知識」だとしたら、いまこの時代に誰でもその光にアクセスできるようになったのは、偶然じゃないかもしれない。

ティクン(修復)の時代が来ている。

だからこそ、「宇宙の設計図」が開示されている。

そういうことなのだと思う。


次回予告

第6回は、世界の宗教・神話が語る「同じ真理」の話。

ヒンドゥー教・仏教・道教・北欧神話・ネイティブアメリカン─30以上の伝統が、カバラと驚くほど同じ構造を持っていた。

「なぜ時代も場所も違うのに、みんな同じことを語っているのか」

その謎に迫る。

だってそういう「設計図」だから。


<strong>MAYO</strong>
MAYO

フリーメーソンって世界を支配する秘密結社のひとつってイメージが強かったんだけど、「生命の樹を使って人間の霊的成長を促す」という目的もあったんだよね。

ニュートンが錬金術師だったって話、おもろいでしょ(笑)。
もっと広まればいいのに。

text: OMOMUKI magazine / CHAKA MAYO

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